電子ビーム・用語集

電子ビームについての用語集です。とにかくわかりやすく説明することに気を配りました。
まだまだしょぼいですが、長い目で見てやって下さい。





・ICRU球 ・α線 ・α崩壊
・運動エネルギー
・エレクトロンボルト/電子ボルト
・γ線 ・γ崩壊
・球形ファントム ・吸収線量
・原子核
・G値 ・実効線量 ・照射線量
・線量当量
・組織荷重係数 ・素電荷
・W値
・電圧 ・電荷 ・電子
・等価線量
・β線 ・β崩壊
・放射性物質 ・放射性崩壊 ・放射線 ・放射線荷重係数 ・放射能


電荷(Electric charge)

 静電気の量を表します。


素電荷(elementary electric charge)

 電気素量とも言い、電子一個当たりの電荷量を示します。1.602×10-19C。全ての電荷量はこの値の整数倍になっていますが、1/3の電荷量を持つクォークの存在も考えられてはいます。


原子核(atomic nucleus)

 原子の中心を構成します。陽子、中性子からなります。陽子は正電荷を持つので、原子核はプラスの静電気を帯びています。通常の原子は電子の数だけ陽子を持ちます。


電子(electron)

 原子の周辺部を構成します。様々な発光現象引き起こす重要な存在。陽子や中性子に比べると遥かに小さいですが、光子よりは遥かに大きいです。通常の原子は陽子の数だけ電子を持ちます。陽子に比べて電子が少なければ、その原子は陽イオン、多ければ陰イオンと呼ばれます。


運動エネルギー(kinetic energy)

 質量を持つ物体が運動、つまり移動していれば、その物体は運動エネルギーを持つと言います。簡単に言うと速度を持っていればエネルギーを持つ事を示します。E=1/2mv^2と云う式で示されます。(E:運動エネルギー、m:質量、v:速度)


電圧(potential difference)

 電位差とも言い、二点間の電位の差。単位はボルト[V]。簡単に言うと高低差みたいなもの、電圧のある所に電子を置けば転がり落ちます。これが電流です。また電位差1[V]の二点間を電子又は素電荷を持つ粒子を移動させる時の仕事量は1[eV]です。


エレクトロンボルト/電子ボルト(electron volt:eV)

 エネルギーを表す単位の一つ。真空中で電位差1[V]の二点間を電子又は素電荷を持つ粒子が加速されて得るエネルギーに等しい。1.602×10-19[J]


G値(G-value)

 放射線化学ではちょくちょくお目にかかるこの言葉。注目する反応の効率を表します。電子ビームの場合で云うと、物質が電子により100eVのエネルギーを吸収した時に発生する反応数を示します。具体的に云うと、AB→A+B(A+B→ABでも良い)と云う反応のG値が「100」と言う事は、10kVで加速された電子一個がそのままの運動エネルギーで試料に入射し、停止するまで完全にエネルギーを奪われた場合、その試料中で引き起こされた反応AB→A+Bの発生数は『10,000/100*100=10,000個』と云う事になります。


W値(W-value)

 電子線(電離放射線)が物質中を通過すると電離により陽イオンと、電子が生じます。この一個の陽イオン・電子対の生成に要するエネルギーを表します。空気のW値は約33.85 eVです。


照射線量(exposure dose)

 空気1 s中の電離作用によって発生するイオン対の生成量を表します。普通「X」と表記し、単位は[C/s]です。昔はレントゲン[R] (1[R]=2.58×10-4[C/kg])と言う単位が使われてました。


吸収線量(absorbed dose)

 物質中で失った単位質量当たりのエネルギー量を表します。普通「D」と表記し、単位はGy。物質1 kg中で吸収されたエネルギーが1 Jの時、1 Gyとされています。以前の単位radは、1[rad]=0.01[Gy]の関係です。電子線の分野ではMradやkGyなんかがよく使われてきましたけど、SI単位系であるGyに統一しないといけないみたいです。あくまで単位質量当たりの吸収エネルギーである事に注意が必要です。表面にエネルギーが集中する低電圧電子線では、サンプル全体の平均吸収線量は小さくても、実際に吸収された表面近傍の線量は、平均値の100倍や1000倍なんて事はよくあることです。
 空気を吸収体として考えた場合の吸収線量(空気吸収線量)は、照射線量に空気のイオン化エネルギーW値を掛ければ良いので、例えば1[R]=2.58×10-4[C/kg]×33.85[eV]=0.00873[Gy(air)]、逆にすると、1[Gy]=115[R]となります。


等価線量(equivalent dose), 線量当量(dose equivalent)

 線量当量は、吸収線量Dに人体に対する放射線の種類などによる効果の違いを補正した量で、被爆量として使われ、放射線防護のみに用いられます。被曝の確率的影響を評価する「実効線量当量」と、非確率的影響を評価する「組織線量当量」がありました。しかし現在では、これらはほぼ同じ意味で、「実効線量」と「等価線量」に置き換わっています。「線量当量」と言う言葉自体「等価線量」とほぼ同じ意味で用いられていますが、(組織)線量当量が、吸収線量に線質係数を掛けて計算していたのに対して、等価線量では、吸収線量に放射線荷重係数を掛けた物で、このそれぞれの係数が若干異なっている事に注意が必要です。
 実際に全ての組織の線量を測定する事は困難ですので、通常のモニタリングでの等価線量は人体の深さ1cmまでの等価線量を表す1cm線量当量を使用します。また以前用いられていた3mm線量当量は使われなくなり、1cm線量当量が主に使われるようになりました。70μm線量当量は特殊な場合のみ使用する事が有ります(低速電子線の直接被曝などの場合には該当します)。これは、放射線荷重係数(旧:線質係数)と組織荷重係数が変更になった為、深さや体の部位による吸収線量のばらつき(これを不均等被曝と言います)の影響が小さくなった為です。なお、1cm線量当量と70μm線量当量と言う言葉は現在も正式に使用されていますが、以前と値は異なる場合があることに注意が必要です。
 等価線量は個々の組織が受けた被曝の内、非確率的影響(白内障や皮膚障害などの様に、ある限度を超えると発症する物)を評価する量ですが、これによりどこにどんな障害が発生するか推測できます。
 単位はSv。電子線で直接被爆なんて殆ど有り得ないと思いますが、もしそんなことになれば一瞬でもただでは済みません。(極端にエネルギーが大きすぎると大丈夫って言うのが不思議な所)電子線照射装置で注意しなければならないのは、二次X線です。くれぐれも気を付けましょう。以前はremと言う単位が使われており、1[rem]=0.01[Sv]です。

等価線量の計算はこちら


実効線量(effective dose)

 実効線量は、各組織の等価線量に組織荷重係数を掛けた物を合計した物で、被曝の確率的影響(蓄積する事によって発症確率の増加する癌、白血病、遺伝的影響など)を評価する為の量です。これにより、どの程度の確率で発症するか(あくまで目安として)推測できます。
 各組織の等価線量を得るのは難しいので、一般的には1cm線量当量を使用します。体に鉛エプロンをしていたり、体の一部しか照射されない場合は体の各部位についての測定結果を用いて算出します。
 例えば、鉛エプロンに覆われていない頭部の1cm線量当量がHa、鉛エプロンに覆われていた胸部の1cm線量当量をHbとする時、「ICRP1990年勧告に基づく不均等被ばくの場合の外部被ばくに係る実効線量を算出するための式」
 
HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm

HEE: 外部被ばくによる実効線量当量
Ha: 頭頸部における1センチメートル線量当量
Hb: 胸部及び上腕部における1センチメートル線量当量
Hc: 腹部及び大腿部における1センチメートル線量当量
Hm: 頭頸部、胸部・上腕部及び腹部・大腿部のうち外部被ばくによる線量当量が最大となるおそれのある部分における1センチメートル線量当量

 ・・・を元に計算しようとすると、Hcはエプロンに覆われているので、Hbと同じ線量。Hmは最大の線量と思われるHaと同じになるので、結局、

HEE=0.11Ha+0.89Hb

となり、実効線量を得る事が出来ます。
 実効線量は以下の何れも超えてはいけません。
@100mSv/5年 A50mSv/年 B女子5mSv/3ヶ月(妊娠不能者、妊娠の意思の無い者を除く) C妊娠中である女子1mSv(本人の申出等により使用者が妊娠の事実を知ったときから出産までの間につき、内部被ばくについて)

実効線量の計算はこちら


放射線荷重係数(radiation weighting factor)

 以前は線質係数と呼ばれていたもので、放射線の種類やエネルギーによって決められています。
 吸収線量が同じであっても、人体への影響を考えた時、放射線の種類(ガンマ線、α線、etc.)や個々の粒子の速度(又は粒子が持つエネルギー)によってその影響は異なってきます。そこで、ガンマ線を基準として、それ以外の放射線について、その影響の大きで係数を定めた物が放射線荷重係数です。
 一般的に、重い粒子ほど大きく、遅い粒子は小さく、中くらいの速さ(1MeV位)で大きく、速い粒子で小さくなる傾向があります。
 組織の吸収線量にこの放射線荷重係数を掛ける事で、等価線量を得る事が出来ます。

放射線 適用範囲 放射線荷重係数
光子 全エネルギー 1
電子・π中間子 全エネルギー 1
中性子 10keV以下 5
10keV〜100keV 10
100keV〜2MeV 20
2MeV〜20MeV 10
20MeV以上 5
陽子 2MeV以上 5
α粒子、核分破片、重い原子核 全エネルギー 20


組織荷重係数(tissue weighting factors)

 各臓器・組織の(主に確率的影響についての)放射線感受性を表す指標で、各組織の等価線量にこの組織荷重係数を掛けて合計すると、実効線量となります。

臓器・組織 改定(1990年)後 改定前
生殖腺 0.2 0.25
0.12 0.12
赤色骨髄 0.12 0.12
0.12 -
結腸 0.12 -
甲状腺 0.05 0.03
食道 0.05 -
乳房 0.05 0.15
肝臓 0.05 -
膀胱 0.05 -
皮膚 0.01 -
骨表面 0.01 0.03
残りの組織・臓器 0.05 0.3
合計 1.00 1.00


放射線(radiation)

 広義には、輻射や全ての粒子線を含みますが、一般的には、高い運動エネルギーを持って流れる物質粒子(イオン、電子、中性子、陽子、中間子などの粒子線)と、高エネルギーの電磁波、すなわち、きわめて波長の短い電磁波(γ線、X線のことで電磁波)を総称して放射線と呼びます。通常、電離放射線を指す事が多く、物質を通過する際に、直接、あるいは間接にその物質の原子を電離する能力を持ちます。


放射能(radioactivity)

 一つには、放射性物質の事。放射性物質とは、放射性崩壊によってアルファ線ベータ線ガンマ線等の放射線を放出する事が出来る物質を言います。
 もう一つは、放射線を放出する能力そのもの事。
 「放射能漏れ」は放射性物質が漏洩した事を示しますから、前者の意です。「放射能が高い」は、放射性物質が多く存在して、放射線を出す能力が高い事を意味するので、後者の意になります。
 この放射能の大きさを表す単位は、ベクレル[Bq]と言います。壊変毎秒(dqs)[s-1]と同じ意味です。以前はキュリー[Ci]が用いられており、1[Ci]=3.7×1010[Bq]の関係が有ります。

放射性物質(radioactive material)

 放射性崩壊によってアルファ線ベータ線ガンマ線等の放射線を放出する事が出来る物質を言います。
 天然に存在するものや人工的に作り出す事が出来る物があり、多数の放射性物質が存在する。例えば、ウランや、ラドン、プルトニウム、トリウム、その他あらゆる放射性同位体など。


放射性崩壊(radioactive decay)

 不安定な原子核は陽子や中性子、光子等を放出して安定化しようとする性質があります。但し、この現象はハイゼンベルグの不確定性により、それら粒子が核のポテンシャル障壁を乗り越えて核外に出られる確率に支配されています。この現象を放射性崩壊と呼び、その確率は崩壊定数や半減期として表されてます。このような現象を利用して年代測定を行う事も可能です。
 放射性崩壊には、放出される放射線に合わせて、α崩壊β崩壊γ崩壊があります。


α崩壊(α decay)

 放射性崩壊の一つ。原子がα線を放出して、陽子数が2,中性子数2少ない核に変換することをいいます 。この時、原子番号は2減少します。つまり他の元素になってしまう。


α線(α ray)

 ヘリウム核の粒子線。陽子二個、中性子二個からなり、かなり安定です。α崩壊にて生じ、重いので貫通能力が低い為、内部被爆の大きな原因の一つになっています。
電子がいないため二個の正の電荷を帯びており、電場や磁場で激しく屈曲されます。


β崩壊(β decay)

 放射性崩壊の一つ。
 原子がβ線(高速の電子)と反ニュートリノを放出して、陽子数が1増え、中性子数が1減った核に変換することをいいます。この時、質量は変わりませんが(正確には僅かに減る)原子番号は1増加して他の元素になってしまいます。
 これを陰電子崩壊と呼び、陽電子とニュートリノを放出して、原子番号が一つ減る(陽子→中性子になる)陽電子崩壊というのもあります。どちらもβ崩壊です。
 β崩壊で放出される電子は、様々な運動エネルギーを持っており、この事がニュートリノの発見を導くきっかけとなりました。エネルギーを保存するには相方が必要だったわけです。


β線(β ray)

 実態は電子ですが、電子を加速した電子線とは異なります。放射性崩壊β崩壊)によって放出される高速の電子(又は陽電子)をいいます。
 一個の負電荷を持ち、電場や磁場で屈曲されます。
 貫通力も、電離作用もα線とγ線の間にあります。


γ崩壊(γ decay)

 放射性崩壊の一つ。
 核励起状態にある原子がγ線(ほぼX線領域にある波長の短い光子)を放出して、元の基底状態に戻る事を言います。α崩壊β崩壊と違い、質量数と原子番号を変えない放射性崩壊です。これは崩壊というより核の脱励起ですね。
 核励起には高速の粒子線をぶつける場合も有りますが、α崩壊β崩壊した原子核は一般に励起状態にあり、安定状態(基底状態)に移行する際に余分なエネルギーをγ線として放出するようです。つまりα崩壊β崩壊に続く放射性崩壊と言えます。


γ線(γ ray)

 実態は光子ですが、放射性崩壊(γ崩壊)や素粒子の脱励起・対消滅によって放出される波長の短いの光子をいいます。
 光子ですから質量や電荷を持たず、電場や磁場で屈曲される事無く直進します。
 X線とほぼ同じかそれより短波長の波長域を持つので、貫通力が高く、電離作用は低いです。


ICRU球, 球形ファントム(ICRU phantom, ICRU sphere)

 球形ファントムは、人体の代わりに、人体の組織に似た成分と密度で作られた球体です。これを用いれば人体を危険に曝す事無く、色々な深さまでの線量を測る事ができ、1cm線量当量、70μm線量当量、3mm線量当量を得る事が出来ます。これを用いれば等価線量実効線量が計算できます。
 ICRU球は、国際放射線単位測定委員会(ICRU)が推奨する球形ファントムで、密度が1g/cm3、直径30cm、組成が酸素76.2%、炭素11.1%、水素10.1%、窒素2.6%(wt%)から成ります。


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