「素粒子と宇宙」


パンフ用原稿。03/24/1999
 物質は原子からできている。原子は原子核と電子から成る。一般の原子核は,陽子や中性子が強い力で結合してできている。このように,物質の構成要素としてより基本的なものを探求し,それらの間に働く力(相互作用)を研究することによって,素粒子物理学は発展してきた。電子,陽子,中性子などが素粒子とよばれるものである。
 現在では,陽子,中性子などはクォークと呼ばれる,より基本的な粒子から構成されていると考えられている。クォークは現在6種類存在するという証拠がある。一方,電子と類似の粒子としてμ粒子,τ粒子が発見されている。また,電荷をもたず,弱い相互作用しかしないニュートリノという粒子も同じく3種類見つかっている。電子の仲間とニュートリノを総称して,レプトンと呼ぶ。
 クォークとレプトンは現時点では最も基本的な粒子であると考えられている。これらの間に働く力には,4種類のものがあることが知られている。これらの物質の構成粒子および相互作用の統一的な法則の記述(統一理論)を追求することが,現代の素粒子物理学の中心課題である。
 基本的粒子や相互作用の性質に関する知識は,加速器実験や宇宙線の観測によって得ることができる。特殊相対性理論により,質量はエネルギーと等価であることが知られている。高いエネルギーの粒子の実験により,大きな質量をもった粒子を生成したり,その性質を調べたりすることができる。
 われわれの宇宙は膨脹している。現在のその温度は絶対温度で約3度であるが,過去には宇宙の大きさは小さく,またより高温であったと考えられる。温度が高いということは,粒子の平均運動エネルギーが大きいということであるから,超高温状態では,エネルギーから質量をもった粒子が生成されたり,また逆に消滅したりという粒子間の反応が盛んになっている。宇宙が膨脹して低温になっていくにつれて,粒子間の反応がおさまり,軽い元素,やがては星や銀河が構成されていったと考えられる。したがって,われわれの宇宙の物質の構成は,宇宙初期の粒子の構成および相互作用から決まっていることになる。このように,素粒子物理学は,われわれの宇宙のありようとも密接に関連している。
 われわれのまだ知らない粒子が多数存在するかも知れない,といわれている。現在の実験装置では相互作用が弱くて検出できない場合でも,超高温の宇宙初期につくられたそれらの未知の粒子が,宇宙の発展において重要な意味をもっているかもしれない。現在,宇宙の観測から,多くの見えない物質(ダークマター)が存在することが知られている。未知の粒子がダークマターなのかも知れないと考えられる。
 最近,ニュートリノに質量がある証拠が確認された。もし適当な大きさの質量をもったニュートリノが存在すれば,ダークマター(の少なくとも一部)になると考えられる。また,ニュートリノの質量は,基本的粒子と相互作用の統一理論の枠組みにも重要な影響を与える。
 以上みてきたように,素粒子理論,素粒子実験(観測を含む),宇宙の理論(宇宙論),宇宙の観測は,相互に結びついている。(また,重力相互作用を含む統一理論の研究では,非常に高度な数学の知識が要求されている。ここでは内容にはふれられないが,理論物理学と数学の密接なつながりも指摘しておきたい。)


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