正高信男著「ケータイを持ったサル」を解体する

「良くていい加減、悪くてでっちあげ」というのが第一印象だった。
正高はこれまで注目してきた学者で、ファンを自称してきたのだが、この本はどうにもいただけない。

問題点その1 (数字のでっちあげ)

実は彼の別の著作(「いじめを許す心理」)でも、計算してみると数字が明らかにおかしいというものはあった。そのときは単なる記述ミスかと思っていたのだが、ここにいたって疑惑は深まるばかりである。

第4章で実験を行っている。対象は、携帯電話を所持していない女子高生25名と、使用歴が3年以上、メモリに300名以上を登録している女子高生25名
(*)

このそれぞれ25名のグループから2名を選び、ある実験に参加してもらっているのだが、ここで疑問がわく。25名から2名ずつだとして、いったい一人何回この実験に参加したのだろう。直接的な記述はないが、間接的には一人一回ずつ参加していることを告げている。なぜそれがわかるか。

その点を説明する前にまずこの実験の概要を説明しておく必要があるだろう。
25名のグループから二人のペアをえらび両方に5000円はじめにわたした上で、二人にはAとBという異なった役割をしてもらう。AはBに5000円をあげるかどうか問われる。Bに5000円あげる場合には、Bは実験者からさらに5000円を受け取り、彼はその時点で所持金15000円になる。次にBはAに5000円あげるかどうか問われ、あげるなら、Aはその5000円のほかに実験者からさらに5000円受け取る。

というわけで、この実験にはAとBという異なった役割があり、AとBに同数必要である。

さて、正高は、この実験の参加者が受け取った「最終的な」平均の額を計算する際に、AとBの役割のどちらかで一回だけ実験に参加したことを前提に計算を行っている(pp.112-114)。
「一人1回ずつ参加」説の証拠1。
また各実験終了後に「もう一度同じ立場で同一の取引をするとして、その場合に同一の選択をするか」ということをたずねている(p.116)。この質問は一人につき何回もこの実験を行ってもらっているとしたら、回答できない質問になってしまうため、ここからも一人一回以上この実験を行っていることはないはずだ。「一人1回ずつ参加」説の証拠2

ゆえに、「一人1回参加した」ことから、25人の各グループのうち、AとBの役割をとったものが最高で12人ずついる、ということになる。余った残り1名がどうしたのかは何も書いていないが、上記の証拠の文章はそうとしか読めない。

しかし驚くべきことに、一人AとBの役割を二回ずつ、全部で4回実験に参加していないと、他の数字があわなくなってくるのだ。

正高は携帯電話未所有のグループにおいて、Bの立場で実験に参加したもののうち、Aからお金をもらったのに、Bにはお金を渡さなかったものが全体の4%と述べている。しかし最大で12人のうちの4%という数字はもはや1人という人数を意味しない。最大で0.5人という意味のない数字である。
どうしてこういうことになったのだろうか。
もし4%という数字にもし意味があるのだとすれば、それが最低でも一人を意味するのはもちろん母数が25人のときである。四捨五入するなら最低23人だが、ふつうに考えれば携帯未所有グループ25名のうち全員がBという役割をとったと推測される。つまりこの実験では一人少なくとも1回ずつAという役割、Bという役割を受け持ち、合計二回以上参加したことになる。
「一人2回以上参加」説の証拠1。
しかし他のデータからすると、二回でも足りないのだ。

正高はAからお金をもらわなかったのに、自分はAにお金を出したものが「ほぼ半数」いたと述べており、この人数は全体の10%だったと述べている。もし全体が25人なら、その10%は2.5人である。彼はここで%を記述するのに一桁まで記載しているのでこの10%は5%から14%を四捨五入しての数字ではないはずである。
ということは上記の4%とこの10%の双方が最低限意味のある人数になるのは50人、つまりこの実験では一人2回ずつ、Aという役割、Bという役割を受け持ち、合計4回以上参加したことになる。「一人4回以上参加」説の証拠。

この記述は「一人一回参加の証拠」1&2に明らかに矛盾する。

結論:正高はこの実験の数値を操作している、ないし結論に関わる重要な数値の記載が間違っている。


問題点2 (以下工事中)
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(*)まずこの時点でこの話がいかにいい加減かわかるだろう。携帯を使うかどうか以外に他の何の情報もない50人のデータをもって、日本のティーンエイジャー全体を語ろうとしている。現在高校生における携帯電話の所持率は9割を超えているところから前者がかなりの少数派であり、携帯電話を使う・使わないという点以外に、他にも社会的・性格的にも目立った特質をそなえていることは間違いないだろう。またそうした点の情報が何もないのだから、そこに操作がある可能性もある。