■多汗症治療ガイド>□予備知識編
● 多汗症について

◆ 全身性多汗症と局所性多汗症

多汗症の分類方法に、身体の一部に多汗を生じる場合の局所性多汗症と、身体の広い範囲で多汗を生じる全身性多汗症とに分ける場合があります。
精神性発汗は手のひら、足の裏の局所にのみ生じますが、そのため精神性発汗と局所性発汗が同じ意味で用いられることもあります。

全身性多汗症

発汗が広範囲に及ぶ全身性多汗症の場合は、胸部、腹部、背中、おしり、大腿部などにわたって発汗する場合が多いようです。加えて、顔面、頭部、腋の下などからも発汗がみられるようです。これらの汗は温熱性発汗になります。さらに、手のひら、足の裏の精神性発汗が加わる場合もあります。

局所性多汗症

局所性の場合は、手のひら、足の裏、腋の下、顔面、頭部など、限定された部位からの発汗がみられます。
多少の前後関係はありますが、これらの部位の発汗はほぼ同時に起こります。

  手のひらから発汗する人は、ほとんどの場合足の裏からの発汗もあります。いずれも精神性の発汗であり、両者は連動関係(※)にあるようです。
  手のひらと足の裏に加えて、腋の下からの多汗がみられる場合も多くあります。
  また、腋の下のみの多汗も多くみられます。
  さらに、上のようなケースに顔面、頭部からの多汗が加わる場合も少なくありません。
  顔面、頭部の多汗のみ、あるいは、顔面、頭部の多汗が主となるケースもあります。

以上をまとめますと、おもなパターンは次の表のようになります。

発汗部位
手のひら・足の裏腋の下顔・頭
手のひら・足の裏・腋の下
手のひら・足の裏・腋の下・顔・頭

また、専門的には局所性多汗症を発汗部位ごとに分けて、次のように言います。

※緊張時に同時に発汗するという意味ではなく、一方の発汗状態が他方のそれに影響するということ。例えば、治療により手のひらの汗を止めたら、足の裏の汗も減ったという人が少なくありません。

◆ 発汗レベルの3段階(手掌多汗症の場合)

同じ多汗症でも人によって汗の量が違います。自分の多汗症レベルがどの程度のものなのかを知っておくのも必要なことでしょう。治療に取り組む際の目安にもなります。

手掌多汗症の場合、手のひらの汗の出方(発汗量)によって、そのレベル(グレード)が通常3段階に分けられています。数字が大きいほど症状がひどいことを表し、“レベル1”“グレード1”あるいは“1度”などと称されています。
発汗レベルの基準は、おおよそ以下の通りとなっています。
それぞれのレベルがどの位の割合で見られるかという頻度・持続性を併せて考えると、より症状の程度がハッキリしてくるでしょう。

レベル1
湿っている程度。見た目にはわかりにくいが、触ると汗ばんでいることがわかる。水滴ができるほどではないが、光を反射して汗がキラキラと光っている。
レベル2
水滴ができているのが見た目にもはっきりとわかる。濡れている状態。だが汗が流れるところまではいかない。
レベル3
水滴ができて、汗がしたたり落ちる。
次のページで、水滴ができ、汗がしたたるレベルの実際の様子が写真でご覧になれます。
   多汗症とは?(兼平山本クリニック)

◆ なぜ多汗症になるのか?−多汗症の原因について

残念ながら多汗症の原因はよくわかっていません。何か特別な原因があって多汗症になっているわけではないのです。ただ、手掌足蹠多汗症の人は一般の人より交感神経の反応が強いと言えます。強いて言えば、交感神経の反応が強いこと自体が原因ということになります。もっとも、なぜ交感神経が過敏なのかは不明なわけですが。
このように特別な原因がなくて生じる手掌足蹠多汗症のことを、専門的には原発性手掌足蹠多汗症と言います。

特別な原因がないということは、多汗症は、よく言われるような、精神的な病気ではないということです。
多汗症の人は、乳幼児期にはすでに手のひら・足の裏が汗ばんでいたりして、多汗症状が現れており、ものごころがついた時にはすでに自分は多汗症だったという人がほとんどだと思います。小さい頃手をつないで歩くのがたいへんだったということを、後になって母親から聞かされたという人もいます。
このように、自我が芽生える前から多汗症であったということからも、多汗症が性格的・意識的な問題から生じる病気ではないということがわかります。

◆ 一般に思春期にひどくなる多汗症

高校生の頃に多汗症がひどくなったという方は多いようです。
ちょうどその時期に失恋を経験したりすると、そのストレスが影響して多汗症がひどくなったんだと考える方もいるようです。

たしかに中学生から高校生にかけては、勉強や恋愛、人間関係のストレスなどの精神的負担も大きくなりますが、多汗症がひどくなるのはそのような心理的な理由によるものではなく、生理的な変化が主な原因です。
例えば、ワキガも思春期にひどくなります。しかし、ワキガがひどくなったのを失恋の痛手のせいだとは普通考えないでしょう。普通は体質的・生理的な変化によるものだと考えるのではないでしょうか。それと同じことです。

発汗が心理的な影響を受けやすい生理現象であるために、ストレスが多汗症自体(多汗症本体)を悪化させると考えがちですが、そういうわけではありません(そういう例がないとは言い切れませんが)。

もちろん、ストレスがかかれば汗は出やすくなります。しかし、ストレスが発汗に影響することと、多汗症本体を悪化させることとは、別に考えたほうがよいと思います。前者はあくまでも一時的な現象です。
例えば、コーヒーを飲んで交感神経が刺激され、汗が出てきたとしても、それを多汗症が悪化したとは言わないでしょう。汗が出やすくなったに過ぎず、いつでも元に戻ることができます。

少し話が込み入りますが、一時的な現象が長期化する場合もあります。
人間関係のストレスが長く続き、その間ずっと汗がひどくなるということがあります。しかし多汗症本体の悪化ではなく、もともとは一時的症状であったものの長期化ですので、カウンセリングや精神安定剤の服用などの適切な治療を受けることで、平常(の多汗症)の状態に戻ることが出来ます。
つまり、多汗症が容易に治らないのと同様に、簡単にひどくなったりもしないのです。

もし、いま、ご自分の経験やものの考え方が多汗症を悪化させた(悪化させている)とお考えになっていましたら、そんな自分を責めるような考え方は捨ててしまって忘れてください。あなたが多汗症であることに、あなた自身はなんの責任もありません。
そうして余分なストレスを減らすことによって、むしろ症状が軽減されるでしょう。


ひら機嫌