声明


金景錫さんの日本網管訴訟が本日、法廷和解した。

このような形で決着をみることが出来たのは、会社側が原告の長年に亙る訴えをついに認め、和解に乗り出したことが契機となっている。われわれは会社側のこの勇気ある行動を高く評価する。

会社側がこうした積極的姿勢をとるようになった前提として、原告の金景錫さんの展開力が大きな役割を果たし、弁護団が頑張って、一審判決で個々の被害事実の認定をかちとったことも大きい。

特筆すべきは、川崎シティユニオン、全造船日本綱管分会をはじめ、労働組合運動が終始この裁判闘争を支え、また、本社や京浜工場に対する数えきれないほどの行動に取り組んでくれたことである。

原告、弁護団、支援のそれぞれの頑張りが、会社側の前向きの対応を生み出したと言える。

和解が法廷和解の形をとったことには意味がある。法廷和解といっても、法廷外でつくった合意を裁判所に持ち込む形に過ぎないが、とにかく裁判所に和解をやらせてしまったのである。

戦後補償裁判は、「時効・除斥期間」「国家無答責」「戦前・戦後別会社論」「個人は国際人権法の主体になれない論」などで原告の訴えを切り捨てる傾向が強いが、強制連行関連の裁判で今回のような法廷和解の事例を積み重ねていくならば、裁判を少しまともに出来るかも知れない。

和解になったことによって、法廷で繰り広げていた一審判決批判が中断されたことは、残念と言えなくもない。

その論点の一つは、一審判決が、原告の具体的被害事実は認定しつつも、「強制労働条約」違反についての判断を回避するため、「強制連行・強制労働とまでは言えない」とした点についてであった。この点についてはさる3月11日にTLO専門家委員会が公表した年次報告書が真正面からの解答になっている。

TLO報告を本裁判で使う機会はなくなったが、強制連行と性的奴隷関連のあらゆる裁判に使えるので、それらの裁判に委ねよう。

支える会はこれで使命を終えたが、金景錫さんのケースについて「国家責任」を問う裁判(江原道遺族訴訟)が東京高裁で係争中であり、支える会の人たちは今後はそうした新たな課題への取組みを始めていくことになろう。

戦後補償が大体終わって、強制連行関係だけがとり残されていたドイツで、最近は個々の企業による補償に止まらず、政府と企業が一緒になって基金を作り、補償を行なう態勢作りが進んでいる。個々の裁判への取組みに止まらず、こうした全体的解決を目指す取組みも今後考えていきたい。

金景錫さんの決意にならって、私たちは今後も闘い続けたいと思う。

1999年4月6日

金景錫さんの日本鋼管訴訟を支える会



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