毎日新聞ニュース
山口地裁下関支部が27日言い渡した「関釜裁判」の判決理由要旨は次の通り。
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◆「道義的国家たるべき義務」 日本国憲法前文からは、過去の帝国日本の戦争と植 民地支配の被害者への直接の謝罪と賠償を、憲法上の現在の法的義務として被告国に命 じているとは認められない。
◆明治憲法27条に基づく損失補償責任 明治憲法は既に失効。仮に日本国憲法に反 しない限度で有効としても、明治憲法下の損失補償請求は特別立法がなければ許されな い。
◆立法不作為による国家賠償責任 一般に、国会議員の立法行為は例外的な場合でな ければ、国賠法上違法の評価を受けない。だが立法不作為が日本国憲法の根幹的価値に かかわる基本的人権の侵害をもたらしている場合は、例外的に違法をいうことができる 。
(1)従軍慰安婦制度は徹底した女性差別、民族差別であり、女性の人格の尊厳を根 底から侵し、民族の誇りを踏みにじるもので、日本国憲法13条の認める根幹的価値に かかわる基本的人権の侵害だったとみられる。そのことゆえに、日本国憲法制定前の出 来事について直ちに同憲法による現在の義務として賠償立法義務を導き出すことはでき ない。しかし一般に、法解釈原理・条理として、先行法益侵害に基づくその後の保護義 務を法益侵害者に課すべきことが許容されている。
右法理によると、帝国日本と同一性ある国家の被告国は、従軍慰安婦とされた女性の 被害増大をもたらさないよう配慮、保証すべき法的作為義務があったのに、多年にわた り慰安婦らを放置し、苦しみを倍加させて新たな侵害を行った。1993年8月、内閣 官房内閣外政審議室の調査報告書が出され、当時の河野洋平内閣官房長官の談話も発表 された。これにより、右作為義務は日本国憲法上の賠償立法義務として明確となったが 、合理的立法期間の3年を過ぎても被告国会議員は立法をしなかったから、被告国は右 立法不作為による国家賠償として慰安婦原告らに各30万円の慰謝料支払い義務がある 。公式謝罪の義務まではない。
(2)挺身隊原告らが結果的にだまされ、幼くして過酷な条件で勤労動員され、種々 の辛酸をなめたと認められるが、慰安婦原告らの被害と性質、程度が違う。被害を放置 することが日本国憲法上黙視し得ない重大な人権侵害をもたらしているとまでは認めら れない。
◆「挺身勤労契約」の債務不履行による損害賠償請求 女子挺身勤労令等の法規によ っても、官斡旋・隊組織による動員方式を検討しても、原告ら主張の契約成立は認めら れない。
◆不法行為による国家賠償責任 日本国憲法が、原告らのいう侵略戦争と植民地支配 の被害者への直接の謝罪・賠償の立法義務を被告国に課していると認められない以上、 右立法案を作成したり事実調査する憲法上の義務はないから、被告政府高官の行為に違 法はない。(「慰安婦は当時の公娼」との)永野元法務大臣発言は、誤っているとして も、慰安婦原告らを指した発言ではなく、名誉を侵害するものではない。
[1998-04-27-19:35]
朝日新聞ニュース速報
「関釜裁判」で韓国人元慰安婦三人への賠償金支払いが認められ たことは韓国でも二十七日午後三時ごろからテレビや通信社のニュ ースで全国に流れた。関係者は口々に、慰謝料としての支払額の少 なさを批判している。
原告の朴頭理さんと同じ「ナヌムの家」(京畿道広州郡)に住む 元慰安婦の金順徳(キムスンドク)さん(七六)は農作業中に判決 を伝え聞いた。「別にうれしくも何ともない。その後、控訴された ら、判決がどうなるか分からないじゃないか。三十万円なんて、い まどき子供にアイスクリーム代でもあげると思っているのか。金は いらない。重要なのは日本政府の謝罪だ。私も(原告の)朴頭理さ んも死ぬまで闘うよ」と興奮しながらしゃべった。
元慰安婦を支援する民間団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策 協議会」(本部ソウル)の梁美康(ヤン・ミガン)・総務(三七) は「初勝訴したという点では意味があるとは思うが、額があまりに も少ない。日本の裁判所が真心から賠償を認めたのか疑いをもつ」 と話した。
韓国外交通商省は正式なコメントは出さない方針だが、担当者の 一人は「判決内容を見ると若干進展した面もあるようだ。しかし、 原告が要求した道義的な責任に対しては否認している部分が多い」 としている。
[1998-04-27-20:40]