ILO総会労働側議長が「慰安婦」問題でアピール

99年TLO総会に参加してきました

強制連行裁判全国ネット代表 永 村 誠 朗

(すおべい常任運営委員長)


ILO(国際労働機構)は1919年に設立され、今年で創立80年を迎えます。設立された背景には、第1次世界大戦とそれによる労働者の多大な犠牲・困窮と1917年のロシア革命があり、公正な労働基準の確立と世界大戦を再び繰り返させないこと等を重要な使命として発足しています。

その意味でも第2次世界大戦時の強制労働・性奴隷問題は無視することの出来ない問題であると言えるでしょう。

99年専門家委員会報告までの経過

ILOに軍慰安婦問題が提起されたのは95年11月大阪府特別英語教員組合(OFSET)の専門家委員会への通報にはじまり、翌年の96年には韓国労総が意見書を提出しました。これに対して、専門家委員会は96年と97年の報告書に日本政府の慰安婦動員が「ILO29号条約に違反し、このような許容できない虐待には適切な賠償が必要である」との判断を示しました。

そして97年の総会では、この専門家委員会報告の個別リストアップをめぐって基準適用委員会の労働側会議では激論となり、議長集約として、日本政府と連合がAWF(アジア女性基金)が実行に移されているので議題にする必要はないと主張していることを考慮して「専門家委員会はこれらの措置が実行されるかどうか、できれば被害者を代表する譜団体と協議の上でモニターするべきである」とコメントし、総会の議題としてリストアップされませんでした。

97年12月には、私たち東京地評と全造船関東地協等230労組が、中国大陸や朝鮮半島からの強制連行・強制労働についての29号条約違反をILO専門家委員会に提訴しました。また98年に入って、慰安婦問題についても日本のOFSETや韓国労総のレポートが提出されました。

このレポートは、「AWFは政府からの賠償ではなく、民間の募金であること、また、日本国首相が送った謝罪の手紙は公的な責任を日本政府が認めたものではない、そのため大多数の被害者は受け取りを拒否している」「日本政府は、国家間で法的には解決済みとの立場を変えていない」ことに重点がおかれています。

このような通報にもとずいて今年3月に出された専門家委員会報告は、慰安婦問題について「AWFからの一時金支給や首相の謝罪表明が拒否されている事実は、大多数の被害者の要求が満たされていないことを示している」として、日本政府による迅速な個人補償措置を促しています。

さらに、強制連行・強制労働については、「このような悲惨な労働条件での民間企業のための大規模な労働者徴用は、強制労働条約違反」との見解を示し、「慰安婦の事件と同様に委員会に救済を命ずる権限がないことから、日本政府が自らの行為の責任を受け入れ、被害者の期待に沿った措置を講ずるべきである」と勧告しています。

日本政府を追い詰めた労働側議長アピール

さて、以上のような到達点のうえに、今年のILO総会には、専門家委員会報告「29号条約・日本に関する報告」を総会(基準適用委員会)での個別審議と日本政府への勧告を実現することをめざして、日本からは強制連行裁判全国ネットの仲間6名がILOを訪問しました。

そして、フィリピンや韓国の被害者(元慰安婦)・支援組織の韓国挺身隊問題対策協議会のメンバーや韓国民主労総の方々と合流し、カを合わせて各国の労働側委員に対する働きかけを行ってきました。

総会の個別審議のリストを決める基準適用委員会の労働者側会議では、韓国労総と民主労総がリストに入れるよう強く訴え、オランダ、インド、ドイツも日本問題をリストに入れるよう要求、フランスは「日本は29号条約の他に87号条約(消防職員の団結権)の問題もある、個別リストはこれ以上増やせないが将来的に取り上げることを検討すべきである」と発言、パキスタンは「同情し、サポートしたい」としながらも個別リストに上げるより、解決を促すアピールで良い」との発言でありました。

反対意見としては、連合の中島氏が「ILOは現にある侵害行為に対処するのが基本的任務、現在の日本に29号条約に違反する実態はない」として反対、つづいて連合国際局の田中氏は「この間の進展はある、300人の元慰安婦が認定され、126人が基金を受け取った」と報告「政治的な問題となっており、この場で取り上げるのは適切でない」と主張しました。また、スウェーデンは、「ILOの監視制度、将来の監視機構としての役割に批判が出ている中で50年前のケースを取り上げるのは躊躇する」としてリストアップに反対しました。

最後にウィリーペイランス議長(ベルギー)は、「リストアップされた23カ国、25のケースをこれ以上増やすことは困難。日本のケースについては意見が分かれコンセサスが得られていない。三者委員会の冒頭に日本政府へ解決を促す議長コメントを発表することが適切と考える」と集約しました。

基準適用委員会報告書に記された労働側議長(基準適用委員会副議長)のコメントは、専門家委員会報告を断固として支持した上で、「日本政府は、犠牲者の大多数の期待に答える現実的な解決策を見出すために、関連労組、被害者女性を代表する団体、および関係政府と会合を持つためのイニシアチブをとるべきである」「日本政府がどのような行動を取るかは、専門家委員会と本委員会の今後の対応にとって決定的なものになるだろう」と結んでいます。

このように総会審議のリストに上げることは出来ませんでしたが、日本政府と連合の孤立が浮きぼりとなり、国際連帯の力が大きく前進していることを示しています。



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