lLO闘争の到達点と今後の課題
強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク事務局長
持橋 多聞
95年OFSETの申し立て
90年から始まったアジア各国の戦争被害者の告発による戦後補償の闘いは、いわゆる「慰安婦」をめぐる論議が先行し、国際機関でも国連の人権委員会での調査や議論が注目を浴びた。
95年6月、大阪府特別英語教職員組合(OFSET)がlLOに「慰安婦」や強制連行労働者の救済を求めて通報したことは知られていなかったが、これに対して条約勧告適用専門家委員会がこのうちの「慰安婦」問題について、29号条約に違反する行為との報告(96年3月)がでて俄然注目を浴びるに至った。慌てた政府は弁明に、95年7月から始めた国民基金(AWF)によって問題は解決されつつあると報告を行い、連合がこれを補佐するコメントを出し、反撃を開始したのである。
韓国労総の申し立て
実はOFSETの提訴する以前の95年3月に韓国労総(FKTU)も憲章24条に基づく申し立てを行っていたのだが、ILOの理事会がこれを審議しなかった為に事実上ボツになっていた。なぜこのような事が起きたのかは未だに分からないが、労総の申立書は立派なものであり、無視できるようなものではなかったので何らかの圧力があったのかもしれない。これはILOスキャンダルと呼ばれた。
結局、OFSETの申し立てに対して専門家委員会が、96年3月に報告書を出した事によって、FKTUは自分たちの申し立てを取り下げた。
専門家委員会の報告(96年、97年)
96年3月の専門家委員会の報告書は日本軍による性的奴隷は29号条約違反であり、賠償を求める簡単なものであったが、この衝撃は実に大きかった。
97年の報告は日本政府と「連合」よりコメントがあったことを踏まえつつ、戦時適用除外論を排して日本の29号条約違反を指摘し、日本の刑法で処罰するように促した。
しかし、一方でAWFの活動にも留意すると述べ、専門家委員会に正しい情報が渡されていない弱点があった。またFKTUの申し立てをめぐる混乱について記述はされているが、原因の解明はなされなかった。
そして、98年はこうした経過を見るために報告書は出されなかった。
全国ネットの申し立て
97年12月、全国ネットは74組合の連名でlLOに対して申し立てを行った。工場や鉱山などで強制労働させられた被害者の救済を求めたのである。(OFSETの時に無視された原因は未だに分からないが)
この申し立てにはその後も続々と参加があり、最終的に235組合となった。OFSET時と較べるとこのこと自体が画期的である。ひとつの事案に対して全国のこれだけの組合が名前を連ねたのである。
私たちの申し立ては実に詳細なものである。裁判所の判決や数々のデータを証拠としてあげ、29号条約に対する12項目にものぼる違反の実態を明らかにした。
また英文ニュースを発行し、世界各国の労働組合やNGOにサポートを訴えてきた。そしてまさに画期的な専門家委員会の報告を引き出したのである。
99年3月の専門家委員会の報告と連合の反論
今回の専門家委員会の報告については別項で詳しく解説するので私は2〜3点の指摘にとどめたい。報告を読めば分かるように、今回は「慰安婦」と強制労働を一本化して29号条約違反とし、日本政府に解決を促すものであった。OFSETやFKTUとの連携の効果もあった。また昨年のマクドゥーガル報告も生かされており、全てがうまくかみあった成果であった。
これに対して日本の労働組合を代表する連合は全面的な反論を試みているがいずれも説得力に乏しいものであった。
5月25日付けの連合の「基本的な見解」によると二国間条約について補償問題は全て解決しているとして、91年8月の外務省の柳井条約局長の「個人の請求権まで消滅させたものではない」という政府答弁を故意に無視している。
また、韓国政府がハルモニに対して行った給付金の支給に当たっての通商外交部の声明、すなわち「日本は過去に行った反人道的な行為に対し、心から反省し、謝罪すべきである」などのコメントを無視し、金大中大統領が日本の国会で行ったスピーチの「我が韓国を含むアジアには、今も日本に対する疑惑と憂慮を捨てきれない人々が大勢います。その理由は日本自ら過去を正しく認識し、謙虚に反省する決断が足りないと考えているからであります」と言った発言を故意に無視して、全て二国間で終わったかのように主張しているのです。
また、日本の強制連行問題はILOで取りあげる性質のものではないと主張し、事実上、専門家委員会の報告書を非難しています。
更に強制労働は「国民総動員令に基づいて行われた」もので違法性はないとまで言い切り、朝鮮の併合=植民地化を合理化するまでに堕落した主張を行っているのです。このような連合の右翼的で堕落した主張が世界に通用するわけもなく、彼らは完全に孤立したのです。
第87回総会での議論と議長のまとめ(略)
lLO闘争の到達点と今後の課題
全国ネットは98年に続き、今年も精力的にロビー活動を行い、大きな成果をあげました。ILOスタッフとの情報の交換、各国代表との会話、そしてなによりも日本、韓国、フィリピンのNGO間の連帯と共同行動を作り出した意義は大きいと言えます。更に私たち以上に韓国労総、民主労総がはりきり、委員会での論議をリードし、ロビー活動も熱心に取り組んでいた点も大きな前進でした。彼らの活躍がなければ今回の成果はなかったかもしれません。両団体に心から感謝したいと思います。
私たちは今総会において韓国フィリピンとの固いスクラムを実現できました。
とりわけ、韓国とは三月にソウルでの共同闘争を成功させ、お互いに強い連帯感が生まれましたが、国際連帯の闘いにおいては今後とも日韓の固い、団結を軸に運動を展開する事が重要だと思います。
今後の課題としては、第一にILOに対する追加情報の提供がありますが、これも韓国側からのサボートがキーポイントになります。
第二に、日本の全ての戦後補償団体と連携して政府に対する闘いを国会の内外において強力に展開することです。
更に第三に、全国ネットは企業攻めの闘いを総ぐるみで、かつ重点的に戦術化し、闘うことが求められています。新日鉄、日本鋼管に次ぐ解決を引き出して、財界全体を巻き込む流れを創り出す事が重要です。
第四に、こうした流れを確実なものとするためには、労組連絡会の全国化がどうしても必要です。
もっとも大衆的であり、日常的に資本と対峠している労働組合は私たちの最も良き理解者であります。労働組合にとっても強制労働という資本の究極の論理を実感し、成長する大切な学校となりうるものです。