色はいろいろ。 98.06.29

「あのグリーンの縞のシャツ、今洗濯してるん?」「グリーンの縞のシャツ?・・・あれはグレーでしょ。」これは僕と母とのある日の会話の一場面である。問題となっているそのシャツは、ある色と白色との縦縞の柄のシャツなのであるが、そのある色が、僕には薄い少し濁ったグリーンに見え、母にはグレーに見える。しかし、そのある色は、他の多くの人にとってもグレーに見えるそうである。言われると確かにそうかなぁ、と僕も思うのではあるが・・・。

このように、僕はたまに色を言い間違えることがある。どうやら色覚に異常があるようだ。いわゆる色弱なのである。

始めてこれが分かったのは、小学校に入って始めての身体検査であったように記憶している。色覚の検査は、様々な色がついた小さな丸がいくつもいくつも並んで大きな丸になっている図を見て、同じような色を辿って構成される文字や数字を言い当てる、といった形で行われる。他の子は難なく言い当てていたようであるが、僕にはさっぱり分からなかった。その後、中学でも高校でも同じ検査が行われたが、今もってあの検査を無事にクリアしたことは、残念ながらない。

このように検査では問題が生じるのであるが、普段日常生活を送っている分には、そう何か特別に困ったことが生じるわけではない。だから、普段は自分の色覚異常について実感することはほとんどない。そうだと言わなければ、周りの友達だって気が付かないだろう。しかし、上に書いたようなふとした時には、やっぱり少し違うんだなぁ、と実感してしまうのである。そうした時には、ほんの少し寂しさを感じてしまう。

例えば、中学校の頃、美術の時間に絵を描いてい た時に、その色使いについて友達に言われた何気ない一言。確か建物の壁の色についてだったと思う。写生であったから、現物の色に忠実であるべきなのはそうであろう。だからその友達も「ちょっと変じゃない?」と言ってくれたのである。何も悪意から言われたものではないし、それは十分に分かっているのだが、やはりほんの少し寂しさを感じてしまう。

あるいは、これも中学校の頃であるが、地理の先生が僕とある子とを呼び出して、あるプリントをくれた。それは、気候分布図のプリントだった。地図帳に載っている気候分布図は色分けで描かれているが、その先生がくれたプリントの気候分布図は模様分けで描かれていた。つまり、色覚異常の関係から判別が困難だと、僕とその子(その子も色覚異常であったのである)が困るだろうから、との配慮から、色分けに依らない分布図をくれたのである。その先生の配慮は非常に有り難く、そこまで生徒のことを思ってくれていたことを嬉しく思うのであるが、その時にもやはりほんの少し寂しさを感じてしまった。

つまり、そうした時に感じるほんの少しの寂しさとは、色が分からないことそのものに対する寂しさというよりも、むしろ周りのみんなとは少し違うことに対する寂しさなのだろう。もちろん十人十色の言葉の通り、個々人には差違はあってしかるべきなのではあるが、同じであるはずの(あるいはそう思われている)部分について差違があることに、取り残されたような寂しさを、ほんの少しだけ感じてしまうのである。

寂しさ、と書くと、僕自身が非常に色覚のことを気にして悔やんでるように思われるかも知れないが、決してそういうわけではない。もちろん、寂しさを感じてしまうのは事実ではあるが、だからと言ってそれはほんの少しだけのものであるし、色覚異常は遺伝的なものであるから、気になるとは言え、気にしても仕方がないのである。同じ気になるなら、むしろ開き直って構えている方がいい。確かに、他の多くの人には違って見えるのかも知れない、これは事実である。しかし、他の多くの人がどうであれ自分にはこう見えるのである、これも事実なのである。

あのシャツの縞の色は、僕には薄い少し濁ったグリーンに見え、母にはグレーに見える。あるいは他の多くの人にとってもグレーに見えるそうである。しかし、そんなことはどうでもよい。グリーンであれグレーであれ、それは表現の違いと思えばいい(中間色に表現の誤差は付き物である)。

大事なのは、僕はあのシャツのあの縦縞の色合いが好きであるということ、その日出掛けて行くのにあのシャツを着たいということ、あのシャツが今洗濯してるとこなのかどうかということ、である。

その日、僕は別のシャツを着ていくことになった(;;)。

 

 

さて、今回は色覚異常について書きましたが、たなかさんのHP「からー・ふぃくしょん」では、色覚異常について幅広く取り上げられていて、色覚異常の原因の説明や色覚異常者の体験談などが掲載されています。非常に面白くためになるHPです。是非おすすめします(^^)。(ちなみに僕が書いた色覚異常に関する思い出(今回扱ったのとは違うまた別の思い出)も載せて頂きました(^^)。)

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