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私の現在までの研究の主な部分をまとめると,「様々な次元における,特殊な構造やトポロジーをもった時空,およびその中での量子場のふるまいや真空期待値」の研究,ということができます。
●まず,大きく分けまして,カルツァ-クライン型高次元宇宙論とその周辺についての論文がかなりを占めます。より詳しく申しますと,カルツァ-クライン型高次元空間内の量子場の振る舞い,カルツァ-クライン型空間におけるゲージ対称性の破れとその応用,高階微分を含むカルツァ-クライン型理論と宇宙,カルツァ-クライン型理論の宇宙論におけるゲージ場の役割,カルツァ-クライン型高次元宇宙における宇宙紐,カルツァ-クライン型高次元空間でのアインシュタイン方程式のソリトン的厳密解,高次元空間におけるゲージ場を含むワームホール解,高次元理論における高密度天体,などに関する研究があります。
●次に大きな部分を占めるのが,ブラックホールについての研究です。変わった性質を持つものとして,ディラトン付帯電ブラックホール解というものが知られています。ディラトンというのは,超弦理論や超重力理論等にしばしば現われるスカラー場のことです。これに関しては,次のような研究をしてきました:a)微小な角運動量を持つディラトン付帯電ブラックホール解の構成,b)ディラトン付帯電ブラックホールの周りの量子効果,c)ディラトン付帯電ブラックホールの多体解,d)ディラトン付帯電ブラックホールの散乱問題,e)ディラトン付帯電ブラックホールと宇宙紐の散乱問題,f)一般次元における,時間に依存するディラトン付球対称解の導出と分類,g)ディラトン付帯電ブラックホールのエントロピーに対する量子補正,h)高次元理論から導かれる,三次元ディラトン付帯電ブラックホール解。
また,Quantum Hairと言うものが付随したブラックホールのHawking温度についても研究をしました。
三次元時空におけるブラックホール解(BTZ解)の発見をうけて,私はその周りのスカラー場の量子効果について考察しました。この時空内の任意の点でのスカラー場の二点関数は厳密に閉じた形で求めることができます。私はこれを二種類の異なる方法(モード関数法,鏡映法)で求めました。スカラー場の量子効果はこの二点関数を元に計算することができるので,私は数値計算を用いて具体的に量子効果としての物理量(エネルギー運動量テンソル,スカラー場の自乗期待値)を求め,時空構造へのバックリアクションを議論しました。同様な時空構造は後に三次元時空以外にも拡張されました。私はそのような一般化された場合についても,スカラー場の量子効果を計算する方法を示し,五次元時空の場合に数値計算を行いました。
●ほかに,宇宙紐の周りの量子場についての研究論文もいくつかあります。宇宙紐というのは,宇宙初期に現われる真空中の位相欠陥のようなものです。たとえば自己相互作用を含むスカラー場のストレステンソルの真空期待値の導出,宇宙紐の周りの電磁場の揺らぎの荷電スカラー場の散乱問題への影響,宇宙紐の周りの電磁場の揺らぎによる電子の磁気双極子モーメントへの補正などを研究しました。
その他の研究としては,地球内部におけるニュートリノ振動について,超対称大統一理論のパラメータとダークマターについて,拡張された重力理論における境界壁と宇宙論,弦理論における量子効果,高階微分を含む理論と場の配位の対称性,などに関する研究を行ってきました。これらはおもに共同研究です。
近年,重力,電磁気力,スカラー力の働く粒子の系の統計力学的考察,長距離力の釣り合った球対称な完全流体の配位,(厳密に解くことのできる)三次元ボソンスターの研究,非可換重力理論の解の研究,などをしました。
●最近は,脱構築理論におけるone-loop量子効果を軸に,グラフ上の場の理論を考察しています。この研究は最近のヒッグスレス理論のモデル構築に役立つことが期待されます。
今までの研究の概要
白石 清
(文中の論文番号は論文リストの論文番号に対応します。)
以上
研究歴 白石 清 (文中の論文番号は論文リストの論文番号に対応します。論文に関する研究の時期は,だいたいの目安) 1984年4月 東京都立大学大学院理学研究科博士課程入学 (1984年4月〜1986年3月 高エネルギー物理学研究所(つくば)受託学生) 1987年3月 東京都立大学大学院理学研究科博士課程修了,理学博士 学位論文題目"ONE-LOOP QUANTUM EFFECTS IN KALUZA-KLEIN THEORIES"(英文) *この間,論文1〜6 1987年4月〜1988年3月 東京都立大学大学院理学研究科研究生 *この間,論文7〜10 1988年4月〜1990年3月 日本学術振興会特別研究員 (於東京大学原子核研究所) (昭和63年度文部省科学研究費補助金(奨励研究(A))研究課題 『高次元統一理論における有限温度・密度での物質の系の振る舞い』) *この間,論文11〜23 1990年4月〜1991年3月 お茶の水女子大学理学部教務補佐員 *この間,論文24〜35 1991年4月〜1991年8月 東京大学宇宙線研究所研究員 *この間,論文36,41 1991年9月〜1993年3月 学校法人秋田経済法科大学秋田短期大学 (現秋田経済法科大学短期大学部)商経科専任講師 1993年4月〜1996年3月 学校法人秋田経済法科大学秋田短期大学商経科助教授 (平成5年度文部省科学研究費補助金(奨励研究(A))研究課題 『位相欠陥のまわりの場の量子効果と相転移に関する研究』) *この間,論文37〜57 1996年4月〜2003年3月 山口大学理学部自然情報科学科物理学講座助教授 2003年4月〜2006年3月 山口大学理学部自然情報科学科物理学講座教授 2006年4月〜 山口大学大学院理工学研究科教授(改組による),現在に至る。 *この間,論文58〜76