年代順に、大好きな監督の作品を一つづつ、30本+5です!(00/01/05 改訂!!)

* 「風と共に去りぬ」  ヴィクター・フレミング
 まずこの作品から。女性の目から見た愛の理想を余すことなく伝えた、奇跡的な傑作。女優以外のほとんどが男性から構成されていただろう制作陣のなかから、原作の女性的な感性をここまで表現しえたのは一体なぜだったのだろう。この作品が戦前に公開されていたなら、日本はアメリカと戦争することなどなかったろう。
(39)

* 「生きるべきか死ぬべきか」エルンスト・ルビッチ
これだけの時間を経て失わないこの作品のオリジナリティとは何なのだろう。冒頭からの驚きの連続が、不愉快な緊張感を伴うサスペンスの方向に向かわず、またその笑いも、わけ知り顔の単純なシニシズムの安楽に陥ることもなく、余りに完璧で怖いぐらいの作品である。
(42)

* 「死刑執行人もまた死す」フリッツ・ラング
 ヒッチコックなんてどうでもよくなるぐらいのサスペンス。こんな時期に既にこうした映画ができていたなんて、映画がどう進歩してきたのかわからなくさせる。
(43)

*「深夜の告白」 ビリー・ワイルダー
アメリカで、たまたまテレビでやっていたんだけど、すっかりひきこまれてしまって。「昼下がりの情事」とか、そういうのもいいけれど、もうこの初期のサスペンスも、すごいんだ。ルビッチを超えているかどうかは、見てのお楽しみ。
(44)

* 「晩春」     小津安次郎
 一度見て、どうしてこんなに良かったのだろうと思ってもう一度見て、人に薦めたくて富永のおばさんともう一度、連続して3回も見てしまった。笠智衆のほとんどなんにも考えていないように見えるとぼけた笑顔が、最後に娘の親友と酒を飲むシーン、一人りんごをむくシーンを引き立たせている。原節子の裏切られた怒りの表情もとっても良い。「麦秋」では理解しがたかった彼女の役柄もこの作品では親近感を感じられる。
(49)

* 「ヘッドライト」 アンリ・ベルヌイユ
ちょっと古ぼけた感じの白黒の映像が、ジャン・ギャバンの渋い演技によく映える。ギャバンでなければこのストーリーはただ甘いだけのメロドラマになってしまっていただろう。キャメラはルイ・パージュ。ベッケルなんかのフィルム・ノワールでのギャバンもかっこいいけど、どちらかといえばこういうせつない映画が好き。
(55)

* 「アニー・ホール」   ウディ・アレン
何度聞いても笑えるユーモアの連続。ダイアン・キートンの演じる女性の知的で純なところがとっても魅力的。
(77)

*「ディア・ハンター」 マイケル・チミノ
見る度に、ああ、またみたいと思う映画ある。僕にとっては、この映画がそれ。といっても、僕にとって、この映画の血なまぐさい後半は、単に前半の引き立て役としてあるのであって、大好きなのは結婚式を中心とした場面だ。
普段、結婚式なんて馬鹿げてるとかって思ってる僕も、こういうのには、小さな女の子のように憧れてしまう。それと、ギターが奏でるテーマ・ミュージックも、僕をとりこにする理由のひとつみたいだ。
ちなみに、「天国の門」もほぼ同様で、悲劇的なラストを迎える度に、あの初めの卒業式の場面がまた見たいと、思ってしまう。(僕はチミノに乗せられてしまってるのだろうか)
(78)

*「セコーカス・セブン」 ジョン・セイルズ
この人は「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」のほうが、たぶん有名だし、それも結構好きだけど(あれほどうつくしく、あたたかいキスシーンが見られる映画はあれだけだろう)、でも、僕にとってはこれがベスト。彼のデビュー作で、その抜群のリアリティと手作りの雰囲気が魅力。かつての仲間たちが再会して、共にひとときを過ごし語り合う、いってみれば、ただそれだけの映画だけど、僕はこれを見て、「早くこの20代を終え、今の友人達とこんなような再会を体験したい」と、うらやましい気持ちにさせられた。
(80)

*「ミッシング」コンスタンチン・コスタ・ガブラス
ほかのいわゆる社会派といわれる人の映画、「戦争反対」とか「人種差別反対」とかそういうメッセージ性の強い映画にふだん感じるような抵抗感がまったくない。レモンとスペイセクの説得力ある演技、そして奏でるドラマ。
(82)

*「すてきな片思い」 ジョン・ヒューズ
この人は最近「ホーム・アローン」で大きく当てたけど、モリーとアンソニー・マイケル・ホールが初々しく、演出が若々しい大胆さに満ちていて、ベスト。
ストーリーは、「プリティ・イン・ピンク」と一緒。女の子が、かっこいい先輩(なんて日本的な表現!)を好きになって、その子が好きな脇役の男の子が、彼女の片思いの成就を助けてあげて、ハッピーエンドという、決まり切ったでも大好きなパターン。
こういう脇役が切り捨てられず、それなりに暖かい描写があたえられる映画が大好きだ。
(84)

*「ボディ・ダブル」ブライアン・デ・パルマ
一見B級映画の作りだが、すみずみにデ・パルマのとび抜けたセンスを感じさせる。ヌーディティといったこうした作品特有の条件をストーリーの中に上手に織り込みつつ、あくまで上質なコメディ・サスペンスに仕立てている。主人公の閉所恐怖症という設定は最後まで十分に生かされ、その語り口はどこまでも視聴者の興味を引きつける。でも、この人、最近ミッション・インポシブルという駄作を作ってるのね。トム・クルーズのお金に負けたのかしら。
(84)

*「家族生活」 ジャック・ドワイヨン
この人の作品は「何だかよくわからん」で終わってしまうこともあるんだけど、(「ラ・ピラート」とか)それって結局、この人の描きたい「狂気」ってものが、僕にとってリアルなものであるかどうかっていうことにかかってる、そんな気がする。というわけで、この場合はすごくリアルだったんだろう。「晩春」もそうだけど、こういう「父娘もの」には、こたえられない魅力を感じる。
(85)

*「ベティ・ブルー」ジャン・ジャック・ベネックス
これも、愛というものが生み出す狂気について。原作だと、ベティ(ベアトリス・ダル)の悲劇的な結末までの道のりが、ただただつらいんだけど、こちらでは、男の子(ジャン・ユーグ・アングラード)の温かな視線というのがあって、それなりに救われる。でも、結局彼は彼女の愛をうまく受け止め切れなかったってことになるんだろう。やっぱり悲しい。
(86)

*「やかまし村のこども達」ラッセ・ハルストレム
こども時代に愛読したリンドグレーン原作による映画化。
北欧の美しい自然は、もうそれだけで映画になってしまうのに、その上にいきいきとしたこども達の生活を描いてみせたら、すばらしいものにならないはずがない。
(86)

*「眺めのいい部屋」ジェームズ・アイヴォリー
彼の映画はここ数年、どれもこれも、映像・音楽・演技と、いうことないくらい素晴らしいんだけど、アメリカの長い冬を乗りきる上で、この映画は、ほんと、ありがたかったなあ。彼女とこれを見て、イタリアにいき、帰ってからも、これを見て、二人で旅行の気分に浸ってた。プッチーニのオペラとかを、二人して聞くようになったのも、この映画のおかげ。
(86)

* 「デ・ジャ・ヴュ」 ダニエル・シュミット
現実と非現実、現在と過去の不思議に交錯する美しい映像の世界、そして音に対する異常な感受性。もう一度見たい。
(87)

* 「ブロード・キャスト・ニュース」ジェームズ・L・ブルックス
「愛と追憶の日々」もじつによかったけど、この作品も泣ける。ホリー・ハンターは魅力的だし、頭の回転は速いのに、テレビ映りの今一つな男に、感情移入させられる。「ピアノ」のホリーも、あれはあれですごいけど、でもこういう現代を舞台にした作品での彼女のほうが、しっくりくる。やっぱり。
(87)

*「黒い瞳」 ニキータ・ミハルコフ
「今死んだ時に思い出せるのは、母の子守歌と、
初夜の妻の表情、
そしてロシアの霧だけだ」

人生とはこうしたものなんだな、というのを(それが本当かどうかはさておき)とにかく、みせてくれる。マストロヤンニの名演があってのものだとはいえ、この物語の構成力はただ者でない。
(87)

*「聖なる酔っ払いの伝説」エルマンノ・オルミ
映画は映画なんだから、いくらウソだって、全然構わない。それがリアルであってくれさえすれば良い。
ありそうにない偶然の積み重ねの先に、神の御心があったって、いいじゃないか。それをパロディーとしてしか描けないとしたら、すごく悲しい。
それからこの映画、バックにストラヴィンスキーのクラリネット独奏曲使ってるんだけど、これがなかなかいい味を出してた。
 ルトガー・ハウアーは意外なハマリ役(彼も芸が広い)、サンドリーヌ・デュマがとても愛らしかった。
(88)

*「恋人たちの予感」 ロブ・ライナー
イギリスにいっているときに、学校の映画上映会ではじめてみたんだけど、メグ・ライアンの、あの早口には全くついていけなくて、悔しかった。日本に帰ってきて、脚本も買い、音声だけテープにダビングして、何度も聞いた。そうやって、英語を学ぶために使った教材という感じなんだけど、何度見ても、ニューヨークの秋から冬にかけての映像がとってもきれいだし、ハリー・コニックjrの音楽も、いかにもおしゃれで、飽きがこなかった。そうして、学んだ英語で、僕が後で留学するのが、この映画の冒頭に出てくるシカゴ大学になるなんて、不思議だねえ。シカゴを舞台にした映画で他に良かったのは「あなたの寝ている間に」。
(89)

*「ニキータ」 リュック・ベッソン
アンヌ・パリローの変身ぶりが、見所なのかなあ。自分の恋人を撮る監督って多いけど、ラストに関しては、彼女とと相談しながらいろいろと迷ったらしいね。レオス・カラックスの「ポンヌフの恋人」もやっぱりそうだったって。カラックスなら、僕は「汚れた血」のほうがずっと好きだけど。
(90)

*「髪結いの亭主」 パトリス・ルコント
うっとりとするような、そんな映像。アンナ・ガリエナ、きれいだよねえ。ジャン・ロシュフォールの踊りもよかったなあ。パトリス・ルコントって、しっとり系だよね。彼の映画もみんな好きだなあ。この映画は特に格別。
(90)

* 「クーリンチェ少年殺人事件」エドワード・ヤン
さて、この映画、かなり終わりの方になるまで、誰が誰だかよくわからなくて、それだけにずいぶん一生懸命見てた。その結果、主人公の驚きとか、そういうのを、ほとんど直接的に追体験した感じ。僕の好きな映画の一つの傾向として、余分なBGMをつかわず、その場の音を重要視するということがあるかな。
(91)

* 「紅の豚」 宮崎駿
すばらしい。練り上げられた脚本が、ハードボイルドの極致を描いている。思わず何度も見てしまいたくなる内容だった。
豚を主人公とした設定をしゃぶりつくすように利用しているが、これを醜男にすることはできなかったろうか。彼の描きたかった理念は、そのようにして、より直接的に表現されたに違いないのだが。このままでは、単なる物語に終わってしまう。でも映画に課された役割というものを考えれば、「単なる」という表現はなじまないのだろう。
(92)

* 「冬物語」 エリック・ロメール
彼の作品の中から、ベストというのを選ぶのは結構難しい。その良さって、ソナチネみたいな小品としてのかわいらしさにあるから。この映画は**さんと一緒に見に行ったんだけど、とってもとってもよかった。いうならば女の子のわがままに男の子が振り回されるというただそれだけのおはなしだけど、彼の描くこうした女性像は僕らの持っている理念型にぴったり重なって、心をくすぐる。
(94)

* 「戯夢人生」 侯孝賢
彼の映画、特に李屏賓がカメラを持ったときの良さは、映像そのものの比類なきリアリティーだ。いつか感じたあの心の揺れ、ときめきが、心の中に呼び起こされる。ただ、映し出される風景を眺めているだけだというのに。
やはり台湾と、(かつての)日本との風景の親近性が、そのような感覚のベースとなっているのだろう。特にこの作品では、主人公の年輪を生かした独創的な語り口で、彼の最高傑作に仕上がっている。もう一度見直したい。
(94)

* 「シングルス」 キャメロン・クロウ
なんだか新しい引っ越し先で知り合った人々というような親近感を感じる。登場人物(とくにキーラ・セジウィックとブリジット・フォンダの演じた二人の女性)もみんなとっても魅力的で、生き生きと描かれている。彼は寡作なんだけど、「セイ・エニイシング」もジョン・キューザックがキュート。
(94)

* 「オリヴィエ・オリヴィエ」   アグニエシュカ・ホランド
 導入のところから話の中心的な筋書きとは関係のないところで、その気分というものを描くうちに、すっかりと作品世界の中に深く深く取り込まれてしまっているの感じる。
(94)

*「ラブレター」 岩井俊二
中山美穂の演技はともかくとしても、脚本がすごく良くて、笑って、泣ける。「打ち上げ花火」も、同じ感じで、とっても良かった。
(95)

かつてのベストはこういう感じだったのですが、最近見直してないものも多く、そろそろ改訂を迫られている感じです。でも、とりあえず追加ということで5本だけ。

*「ゆきゆきて、神軍」 原一男
生きていくために部下を殺しその肉を食らった(?)らしい、元陸軍将校を「神軍」奥崎がその罪を追求していくドキュメンタリー。しかし、ここでもっとも胸を打つのは、過ぎたことは過ぎたこととして、戦友をかばい口を割ろうとしない山田の姿。日本人だなあと思う。でもこれは別に監督の良さというよりは素材の良さだろうなあ。
(87)

*「ヨーロッパ」 ラース・フォン・トリアー
これはちょっときすぎていて、どういってよいのか。観客自身が催眠状態で映画の主人公になるのだけど、その主人公は最後にあっさり死んでしまうのだ。絶対どこかで、何かが起こって助かるに違いない、という僕らの期待はあっさり裏切られて映画はTHE END。後味は最高に悪いけど、とにかくユニークで印象的。
(91)

*「ヒアー・マイ・ソング」 ピーター・チェルソム
これは、映画としてはとってもまともだし、ちゃんとハッピーエンド。愛をとっても素直に語っているのに、展開は読めない。僕もこんな風に愛に生きたい。
(91)

*「愛を弾く女」 クロード・ソーテ
友人の彼女と何となく相思相愛になり、しかし友情を優先して身を引こうとするハードボイルド。それをてらいもなく、セオリーどおりに、そのままに描いている。そういう形式的なところがほとんど演歌だが、俳優の演技と、なによりも音楽が素晴らしく、じっくりとひたれる内容になっている。形式的なだけに、繰り返し見ても美しい。
(92)

*「めぐりあったが運のつき」 ピエール・サルバドール
殺し屋がその標的を好きになってしまって、別の殺し屋から彼女を守る、といういかにもありそうな設定なのに、ロシュフォールの飄々とした演技と次から次に起こる予想外の事件に目が離せない。この人の作品は他に見ていない。要チェック。
(93)

 

 


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