別府・由布院・生竜温泉・博多に行ってきました。(2004/05/14-16)


赤丸の地点がそれぞれの場所です。今回は車ではなく、フェリー・電車・バスでの旅行となりました。実は妻と一緒に電車で旅行するのはこれがはじめてです。


広島港から別府まで

広島港から別府までは高速船にのりました。広島にこしてからもう何度も瀬戸内海を移動しましたが、狭い海に小島の点々とならぶ風景は実によいものです。
船の速さは比較にならないでしょうが、こういう景色は源平の頃からほとんど変わらないんだなあと思うと感慨もひとしおです。
高速艇は時速60kmで走っていきます。速いことはいいのですが、自由に甲板にでられないのが玉に瑕。でも途中寄港地の柳井に止まる直前に10分だけ海風を楽しみました。


別府

別府では定番の地獄めぐり。左の写真は間欠泉が湧き出しているところ、中は鉄分で赤く染まった湯に足を浸しているところ、右は噴出する蒸気を竜の像の口から噴出させています。
地獄めぐりというのは、高温の湯や水蒸気の噴出する地域を「○○地獄」と称し、青い硫酸鉄を含んだ湯の湧き出る「海地獄」、赤い酸化鉄を含んだ上掲の「地の池地獄」といったポイントを主に徒歩でまわっていくアトラクションです。
こういう「地獄」というネーミングにかこつけた見せ方は日本人がそれなりに信心深かったころには観光客を喜ばせることもできたでしょうが、今の時代にはさすがそぐわなくなってきているようで、現在リニューアルを進めている「地獄」もありました。上掲写真中央の、噴出するお湯を冷まして足湯とするのもそのアイディアのひとつで、最近リオープンした「坊主地獄」は、もうまったく地獄というネーミングを無視し、美しい庭園で自然の音を聞きながらこうした足湯でリラックスしてもらおう、という趣向にすっかり様変わりしていました。一方逆に悪乗りがキッチュな路線に向かっているのが上掲右写真の「金竜地獄」で、噴出口の音をきかせる「地獄のささやき」などいくつかの傑作にも出会うことができました。
写真左の「竜巻地獄」も、今は狭い石組みに囲われてしまって窮屈そうですが、今後はイエローストーンの間欠泉のように、自然との調和を目指した見せ方に変わっていくかもしれないな、と感じさせられました。

別府では上記の「地獄」が集まる鉄輪地区にある「おやど 湯の丘」というところに宿泊。
ここらはそうした「地獄」があちこちにあるだけあって、丘の上から見下ろすとそこかしこから湯煙があがっています。この「おやど 湯の丘」の中庭にしつらえた3つの天然蒸し釜を見ると、そうした湯煙のもとを実際に確かめることができます。側溝の多くからも暖かい湯気がほのかにあがっていて、この季節でこれだから冬になると情緒抜群に違いありません。

情緒といえば、この季節にはこの季節の良さがあって、それはざぼんの花の香り。
夜、宿の近所を(例によって笛を片手に)散歩したのですが、さわやかな芳香がどこからともなく漂ってくるのです。知っている花の匂いではもっともくちなしに近い。花好きの妻と結婚してから、こうした匂いに敏感になったのですが、特に暗い夜道に香る花の匂いはそれだけで浪漫の世界。これに付け加えてひなびた風景と笛の音がセットになるのだから、妻もうっとり・・・、のはずだったのだが「近所迷惑になるから、ここから先は笛はやめてね」とお叱りの言葉をいただきました(汗)。

ちなみに昼間の風景も、野焼きをした山ののんびりした草地が広々として美しく、深みがかりつつある木々の緑のグラデーションとともにそれはそれは美しい。写真でお見せできないのが残念です。

宿については食事もお風呂も最高でした、とだけ記しておきましょう。特に山芋を使った蒸し料理と鯛のお頭のから揚げが絶品でした。


別府から由布院へ

今回の旅の楽しみの一つは電車とバス。
特に荷物が重くなるのも構わず持参した携帯用CDプレーヤーとCD10枚を聴き続けてました。
もちろん電車で音楽を聴くのはこれがはじめてというわけではありませんが、旅行の途中、まったく見知らぬ風景のなかでとなると初体験だった気がします。あとヘッドフォンを二つ用いて妻と一緒に同じ曲を聴いていることで、車上のライブを楽しんでいるようなそんな気分にも慣れます。気持ちの問題なんだろうけど、一人で曲を聴くのと二人で聴くのとでは大きな違いがあると感じさせられました。

そうしたCDのなかでこれはあたり! というものをいくつか紹介。

1 「クルト・ヴァイル作品集」 ギゼラ・メイ(歌)
クルト・ヴァイルはドイツの作曲家で、20年代のワイマール時代に活躍するものの、ユダヤ系でかつシニカルな内容の劇音楽でナチに迫害を受けアメリカに亡命しています。
そういう退廃的なムードの音楽で別府から由布院への曇天下の暗い森の中を走るのは、なかなかの趣がありました。

2 「マイ・フェア・レディ」 アンドレ・プレヴィン・トリオ 
1もそうですが、鉄道旅行のBGMにはやはりもともと映画や劇のために書かれた音楽がしっくりくるようです。アンドレ・プレヴィンはその後クラシック界で指揮者として活躍する才人で、このアルバムはそんな彼の才気ばしった白いジャズの超絶技巧が楽しめます。車もそうだが、電車にはやはりテンポのよい曲がよく合うようです。そして空間的にはむしろ広がりのない小編成のアコースティックな音作りだと、前述のような「列車ライブ」の気分が味わえます。

由布院

湯布院はその街づくりにかけた人々の姿を「プロジェクトX」で見たときから、一度見てみたいところでした。

でも現実に訪れてみるとまだまだだなあという感が否めないです。嵯峨野・嵐山を小規模にしたような感じで、「湯布院らしさ」は今ひとつ伝わってきませんでした。もっとも泊まっていないというのは大きいかもしれませんが。それにしてもドイツのバーデンバーデンをお手本にしたそうですが、残念ながらそこまでの風情はちょっと・・・です。
ただしネットで調べてみると、「パーク・アンド・ライド」という、街の外に大きな駐車場を設け町内の車の通行を規制するという実験を行っているようで(リンク1、もっと見たいひとは数字を263-7まで変化させる)こうした意欲は買えます。ぜひ続けてもらいたいものです。
他にも地域通貨の試みもしているようです。


湯布院のお店では上記写真(中)の「ブルーバレン」という雑貨屋と
写真(右)の作品を購入した「クラフト館 蜂の巣」が楽しかったです。
ちなみに写真の雛たちは木にうがたれた球形のくぼみの上で自由に向きが変えられるようにできていて、妻に毎日新しい題でセッティングされてます(笑)。ちなみにこれは「甘えるチヨと将来に思いを馳せるピヨ」です。

生竜温泉
(宝泉寺温泉郷)




ここの温泉は宿が二つだけ。これ以上ないというくらい鄙びていますが、歩いて5分程度のところが宝泉寺温泉で、そこには「ホテル」も並んでいます。
写真にもあるように、泊まった旅館「やひろ」は藁葺き屋根の純和風の建物と緑色の屋根の美しい洋風の建物とで構成されており、その凝りようは館内にまで及んでいます。
しかしこの洋風の別館、一階が「離れのお風呂」という感じで利用されているだけで、美しいアンティークで装飾された二階のサロン(写真右上)はほとんど利用されていませんでした。日曜の朝、駅までのバスを待つ間ここでゆっくり本を読んでいたのですが、その間ご主人が階下のお風呂を一生懸命掃除していました。これが湯布院にあればさぞにぎわうだろう、という凝ったつくりなんですが逗留中はほとんど僕ら二人で独占しているようなものでした。
都会の喧騒を離れて二人きり静けさをたのしみたい、という向きには最高の場所だと思います。おりからのどしゃ降りで川の水は相当に増水しており、川に向って大きく開いた窓を持つお風呂から見えるのは雨・雨・雨という感じで、ほとんど世界から隔絶された感さえありました。

そしてこの宿もまた料理は絶品。特におかみの自慢らしい、この土地ならではの野草料理はなかなかの味わいで、今まで食べたことのなかったものもいろいろ出てきました。特に驚かされたのが生のあざみの味噌和えで、うどのようなさわやかな味わいに驚かされました。あざみって食べられたんですねぇ。
サービスは良くも悪くも民宿という感じで、決して洗練されてはいないものの、人と人とが近い距離で直接触れ合うというありようがなかなか良かったです。

博多

博多の街は広島にきてからは三度目ですが、ゆっくり街を歩くのはほとんどこれがはじめて。小さかった頃には母の実家が小倉だったのでここにも何度か来たこともあったはずですが、すっかり記憶の外。
第一印象は「都会!」という感じで、知っている街ではもっとも大阪に近いですね。ここが大阪のミナミで、ここがキタかなあみたいな。駅から中心街まで続く町並みも実に整然としていて、意図的な計画の賜物という感じです。日本の都市では名古屋や京都のように、駅前と街の中心とが離れているところも多いですが、博多もその一つ。にも関わらず駅前からすでにもう隙のない感じで「広島負ケテル!?」という印象でした。

今回博多で一番楽しみにしていたのが、一蘭のラーメンで、前回はじめて食べたとき「こんなにうまいラーメンは他にない!」と思ったのですが、今回二度目はそこまでの感激はありませんでした。それでも妻はだいぶ喜んでいたようです。
一方それほど期待せず入って大収穫だったのが福岡アジア美術館。僕らふたりとも東南アジアのインテリアや小物好きなので、入場料200円ならまあいいか、くらいのつもりではいったら、現代の素晴らしい作品がはじめから最後までずっと続いていて、圧倒されました。それでも今回見られたのは所蔵品のおそらくほんの一部。ぜひまた見にいきたいです。もちろん日本人好みのものが選ばれているということもあるのでしょうが、アジアにこんなに面白い絵を描く人が育っているとは知りませんでした。
僕自身も最近日本人の絵に興味を持つようになってきていて、鑑賞のための素地もだいぶできていたのかもしれません。それぞれの文化背景にはそれほど詳しくないので、どこまでが伝統的な手法でどこまでが独自の表現なのかはわからない部分も多かったのですが、あまりそういうことを気にしないでも楽しめたのはキュレーターの手腕なんでしょう。
とにかくお奨めです。福岡におとずれる機会があったらぜひ見にいってください。